一流ホテルで、ちゃぶ台をひっくり返す?!

2002.03.07

=今年も「花酔曲」の季節がやってきました!春の風を感じていただければ幸いです=

wait-1 ←これは、店内で珈琲豆をお買い求めのお客様にお待ちいただく際

座っていただく、いわゆる椅子替わり?のコーナーなんですが・・・

いくら何でも失礼すぎますよね。麻袋の中にはハンドピックした豆が

入っていまして、それを何段か重ねて、座布団が置いてありますが

なんとかしよう・・・と思いつつ、もう3年間もそのままでいます。常連のお客様、ご免なさい。

気持ちはあるんですが、「これはこれで良いかな?雰囲気もあるし・・・」(あるか?)何て、勝手に

思いこんじゃっています。そして最後は「とにかく、うちは味で勝負!見てくれは関係ない!」とか

言って、結局自分も“納得した振り”をしているようです。でも、味で勝負は大事でしょう?

昨年の今頃だったかな、都内の一流(風)ホテルで飲んだコーヒーが、あまりにも不味くって

逆にショックを受けてから、特に、味にばかりこだわってしまいます。これこそ「反面教師?」

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その日は、春を感じさせる暖かな日でした。私は、人と会うために都内のホテルにいました。

お昼時だったので、軽く食事をしながら・・・と言う事になって、綺麗な日本庭園の見える

ビュッフェのような所に行きました。お会いした方は、テレビのお仕事などで、お世話になった方で

まずは、簡単にお礼など言いながら、コーヒーを口に入れてビックリ!「何じゃこりゃー」と思わず

口に出てしまいそうになりましたが、そこはホテルですから、まあこらえて、カップの中を覗いて

又ビックリ!「何じゃこりゃー、油が浮いているじゃーないか・・・」もう頭の中は真っ白です。

(油が浮くのは、通常豆が古くて酸化している証拠で、そんな珈琲にまさかここで出逢うとは)

「まずい、まずい、まずいっ!!!」お世話になった人と会っていなかったら、きっと私は壊れて?

いたでしょう。巨人の星のお父さんのように、ちゃぶ台じゃなかった、テーブルをひっくり返して

「てやんでい、べらぼうめ。責任者呼んでこい、このすっとこどっこい!」てな感じでしょうか?

いっくらなんでも、これはひどすぎる。こんなレベルの低い珈琲を出していたら、日本の珈琲は

終わってしまう。怒りと葛藤しながら、穏やかな顔をしなければいけない、酷な?状態の私に

追い打ちをかけるように、ボーイさんが、私の珈琲カップに珈琲を“たっぷり”注いでいった。

(どうやら、お代わり自由らしいが、誰が注いで良いと言ったんだー!勿論又油たっぷりだし・・・)

もう倒れそうな状態の私は、「なんとかこの場を取り繕って、悪いけれど、早く帰ろう・・・。」

そう思っていたら、やっぱり来た、「鈴木さんは、こう言うところの珈琲を、どう思われますか?」

やばい・・・やっぱりそう来たか。どうも、周りの人達からすると、私が外の珈琲を飲んでいるのが

何となく不思議に見えるようで、いつも聞かれてしまうし、正体を知られると、場合によっては

珈琲を出すのを嫌がるお店の方まで居たりして、実際は、そんなに気にして珈琲を飲むわけでは

決してないのですが、更に「僕は、このホテルのオーナーと知り合いなので、何か気になることが

有ったら、言っておきますよ・・・」と言うこと。それは、もう口が裂けても言えません。

「こんな珈琲を出すのは、ホテルの良識を疑うとしか言いようがない!」何て言うことは・・・。

たかが珈琲ですが、そのホテルの気持ちを知る為に、一番手っ取り早いのが、珈琲を飲む事だ

と思います。何故なら、ロビーやビュッフェは、そのホテルの入り口のようなもの。そして、珈琲は

必ずと言って良いほど、皆さんが口にする飲み物です。ところが、その珈琲が一番、ごまかすには

都合の良いものでもあるようです。なぜなら、肉のランクを下げれば一目瞭然、すぐにばれます。

ですが、珈琲なら、ちょっとぐらいレベルの低い物を使っても、わかりはしない(だろう)と言う事。

人間の心を映し出すのが珈琲の不思議なところ。こんな珈琲には、おもてなしの心が見えない。

悔しい・・・。日本で一番良い珈琲を出すところが、一流ホテルだと思っていたのに・・・。

ご挨拶もそこそこに、僕は席を立った。何を話したのか、混乱していて、良く覚えてはいないが

「この珈琲を飲んで、どう思う?」の質問には、「安心する」と、苦肉の答えを言ったように思う。

「安心する」なら、言葉として悪い言葉ではない。オーナーと知り合いの方に、失礼は言えない。

只、この珈琲を「旨い」とは、死んでも言うことは出来ない・・・。だから、「安心する」と言った。

本当の意味は、「こんな低いレベルの珈琲なら、私の珈琲が世に出るときに、何の邪魔にも成ら

ない。だから、安心する」と言う事。だが、普通は、そう言う風には取らないだろうし、それで良い。

そう言ったとき、相手の方は、とても困った顔をしていた。頭の良い方だから、もしかしたら案外

気がついていたのかも知れない・・・。でも、気がつかない振りをしていてくれたのかな?だから

あんな困った顔になったのかな?・・・。真相は分からないし、聞くこともないだろう・・・でも

ショックだったのは事実で、その後、私は、こだわりに、こだわった「石臼珈琲」を開発した。

こんな所にも、何かが生まれるきっかけはあるんだな・・・。面白い物だな・・・。そんな風に

感じてしまう今日この頃です。皆さんは、珈琲を飲んでショックを受けたことはありますか?

機会があったら教えて下さいね。何かが生まれる“きっかけ”に成るかも知れませんので・・・。

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・