焙煎の神髄(本編その3・蒸し焼き)

※本日は3.11・・・、特に、心の痛む、そして、涙の滲む日ですね。祈りの気持ちで過ごしたいと思います。

『焙煎の神髄』
<蒸し焼き>
前回、<温め>の話で、爪でちょっと傷がつけられる程度までが温め作業の目安と書かせて頂きましたが、その後の火加減を<蒸し焼き>しているイメージの火加減で焙煎するのが、実は‟鈴木流”のとても大事な部分になります。

温め作業が済んだ後、余計な水分を飛ばすために、出来れば1分位、ダンパーと呼ばれる排気のレバーを全開にします。

※写真は、私の古い焙煎機ダンパー部分になります。最近の焙煎機ですと、ハンドル式で目盛りが付いているものが多いようですが、やることは同じです。

そして、水分飛ばしの作業が済んだ後、また、ダンパーを最初の温めと同じ「閉め気味」に戻して、次の<蒸し焼き>作業に入ります。

この蒸し焼きのイメージが一番難しいと仰る方が多いのですが、単純に言いますと、温めているだけでもなく、かと言って、外から強い火で焼いてしまっているという感覚でもないイメージです。(余計難しいですね)

簡単に言えば、ここである程度強い火加減にしてしまえば、後は機械任せで焼けるのですが、それですと、外は焦げて、中は生っぽさの残る、いわゆる「酸っぱ苦い」コーヒー豆になりやすいように感じます。

強く焼きたい気持ちをぐっとこらえて、<温め>の時の火加減よりも‟少し強く”、それでいて、外から焼いているよりは‟少し弱い”火加減をイメージして下さい。

私の焙煎機の場合、<温め>時の火加減よりも、1目盛りだけ強く、そして、時間的には<温め>と同じ位の時間を掛けて<蒸し焼き>します。

例えば、トータル20~22分程で焙煎していたとしますと、1分の下げ止まり、その後、6~7分ぐらいの<温め>、また1分の水分飛ばし、その後、6~7分ぐらいの<蒸し焼き>時間を取る形となります。

そうしますと、「焼いている時間が短いじゃないか」と思われるかもしれませんが、そうなんです、焼いているという感覚の時間は、とても短く、<温め>&<蒸し焼き>の時間が殆んどとなるのが『鈴木流の焙煎』という事になります。

温めて、蒸し焼きして、余計な酸っぱさを消した後、さっと焼いて、心地よい甘苦さを表現することが、私の考える、美味しいコーヒー、喜んで頂けるコーヒー、出会えて良かったコーヒー、もう一度出会いたくなるコーヒー、心に残る感動のコーヒー・・・と言う事になります。

さてさて、どうでしょう?蒸し焼きのイメージは、なんとなくでも湧きましたでしょうか?焼いてはいるのですが、焼いていない、何だかちょっと思想家っぽい話で申し訳ありませんが、この感覚が、とても、とても大事です。

・・・とは言いましても、数字が気になる方が多いと思います。

例えば、0.7~0.8kpaで<温め>ていましたら、0.1だけ強くして、0.8~0.9kpaの目盛りで<蒸し焼き>します。
只、これはあくまで私の焙煎機での一つの例でしかありません。

何度でも言いますが、数字は目安や基準にはなりますが、それだけを追いかけても、本物は生まれません。

レシピ通り(数字)だけで良いのなら、もし、それだけで美味しいコーヒーが出来るのなら、既に世の中美味しいコーヒーだらけではないでしょうか?

もしそうなら、私はこの世界にはもういないでしょうし、こんなに使いにくい鈴木の店に、あんなにも多くのお客様が押し寄せるような、そんなありがたすぎる事実は、決してなかったはずです。

コーヒー生豆達の声に耳を傾けましょう。彼らがどんなコーヒーになりたいか、どんなコーヒーとして世の中の役に立ちたいか、想いを、願いを、叶えてあげられる‟腕”を身につけようじゃありませんか。

相変わらず変な話ばかりで申し訳ありません。只、これこそが焙煎の‟真髄”が‟神髄”たる所以とお考え頂ければ幸いです。

次回は、<本焼き>の部分についてお話しさせて頂きますので、どうぞ宜しくお願い致します。またまた変な話に、最後までお付き合い頂きましてありがとうございました。