『焙煎の神髄』(やっとの総集編?!)

こんにちは!鈴木でございます。残念ながら、厳しいコロナ禍のまま2020年の最期を迎える事になってしまいました。最後に『焙煎の神髄』総集編として書かせて頂きたいと思いますが、その前に、まずは医療関係者の皆様方に感謝の気持ちを述べたいと思います。

「皆様の頑張りに心より感謝しております。きっと随分とご無理をされていると思います。もう充分頑張られているのですから、もう本当に充分です。これ以上は無理をされないで下さい。ご自身の体調を一番に考えて、身体も、心も、出来る限り休ませてあげて下さい。どうかご無事に、この難局をお元気に切り抜けられてくださいね。本当に、本当に、ありがとうございます‼」
2021年は、医療従事者の皆様に取りましても、落ち着いた年になりますように、良い年になりますように・・・と祈りつつ。

『焙煎の神髄』(総集編)
随分・・・と間があいてしまい失礼しましたが、プロの方に限らず、思いのほか一般の皆さんにもご好評頂いた『焙煎の神髄』総集編を書かせて頂こうと思います。
まず最初に、美味しいコーヒーは、品質・焙煎・鮮度の3点が揃ってこそ生まれるものです。これはプロのみならず、皆さんご存知の事だとは思いますが、実際、自家焙煎の店が商売的にスポットライトを当てやすいのは「品質」や、「鮮度」の面でしょうし、その方が楽だと思います。
只、私自身が考える美味しいコーヒーが生まれる一番大きなポイントは『焙煎』なのです。
いっくら品質が良い豆でも、いっくら煎りたてでも、焙煎がちゃんとしていなければ、美味しいコーヒーは生まれないと鈴木は思っております。

今日の朝、いつものように家でコーヒーを飲みました。豆は、エチオピアのG3ランク(グレード3)、焙煎は10/3と袋に書いてありました。(随分前なので本人覚えてない・苦笑)
多分、新しい生豆が入ってきたので、試しに煎った時の物と思いますが、昔と違い、最近はエチオピアの自然栽培豆でもG1(グレード1)と言われる高品質な物も手に入りますが、私が気に入っている、ある地域の豆は、いまだにG4がメインで、最高の品を探して、何とか手に出来るのがG3ランクの物になります。
只、3か月近く前、グレードは3番目、抽出もコーヒーメーカーで淹れましたが、いやぁ、美味しい事、美味しい事。ある意味、最高の味わいです!
・・・つまり、焙煎がしっかりしていれば、アピールできるグレードが高いものや、コンテスト物でなくても、また、煎ってすぐの物でなくても、最高と呼べる品が創れるはずなんです。

勿論、お料理の世界と一緒で、品質が良く、美味しいと評判の○○産、コンテストで賞を取ってオークションで落札した高価格の豆、産地の環境や栽培方法にも拘りの単一農園産スペシャリティー豆等々、”売り”が有った方が、お客様には伝わりやすいので、私も勿論、出来る限りそう言った豆を集めるようにはしています。
でも、もしそう言った豆が手に入らない時代が来たとしても、私自身は何も困りません。それは”焙煎の腕”を身につけたからです。

随分前ですが、大声でこんなことを言って、”ひんしゅく”を買ったことが有ります。
それは、最高の料理人なら、有名な産地の最高と呼ばれる材料がなくても、いや、最高どころか、まともな材料が無くても、たとえば家の周りに生えている貧弱な作物しか無くとも、その時どうしても、もしもてなしたい大事な人がいたのなら、その”神の腕”を使い、最高の料理を作るはずで、だからこそ最高の料理人なのだと。
いやぁ、こんなことを言っているから鈴木は怒られるのでしょうね。

さて、本題に戻ります。なんたって、今日は総集編なのですから。(笑)

順序を追って焙煎に入りましょう。(この後は今までの話を順序を追って繋ぎ合わせた形となります)

→その1.<温め>焙煎の専用釜を使用する場合は、生豆を温める前に、まずは焙煎釜を温めます。コーヒー豆を煎る為に、釜を温める余熱と言う作業は、通常20分~30分くらい行います。火加減や時間は釜によってまちまちでしょうが、私の場合、8キロの釜でガス圧計のメモリは0.5~0.6、ダンパーと言う排気の調節機能が付いているようでしたら、メモリ1程度の閉め気味にして行います。

温まりましたら、さぁ、生豆を投入しましょう!

釜のリミットで考えて半分くらいの分量で始めたとします。(8キロ釜なら4キロ、4キロ釜なら2キロ)私の場合は、全ての火を消した状態で投入しますが、口火が消えないタイプや、火を全部消すのは、せっかく釜を温めたのにもったいない・・・と考える方は、温めた時のままの弱火で投入されても良いと思います。

どの形で生豆を投入したとしましても、温度計があるとすれば、その温度は下がってゆきます。
只、私は温度が下がるというよりも、冷たかった生豆が、ほんのりと温まって行くと感じる瞬間になっています。
焙煎業界において、多くの先生たちが唱える、いわゆる「下げ止まり・・・」という所ですが、私の考える『ほんのり温まる・・・』と言う作業の時間は、大凡1分くらいでOKです。

その際、サンプルスプーンがあるようでしたら、中の生豆を少し取り出して触ってみて下さい。きっと『ほんのり』と、温まっている筈です。

生豆が温まったら(温度が下げ止まったら)火を点けます。その時の火加減は、私の8キロ釜ですと0.7~0.8位になります。
「なんだ、温めとか言って、やっぱり焼いているんじゃないか」そう思われるかもしれませんが、私の意識の中では、あくまで焼いているという感覚ではなく‟温めている程度の火加減”と言う感覚です。

生豆の外から熱を加えて行って焼き色を付けるのではなく、焙煎するための準備運動、あくまでも生豆を温めるための作業です。この作業が、私はとても大事と考えています。

では、温まったという作業はどうなったら終わるのでしょうか?・・・、その時の温度は何度?・・・、時間は何分何十秒?・・・、そう思われることでしょう。

『温度やら時間やら・・・、そんなもんどうだって良いんだよ!』焙煎を教えていて、そう言うと皆キョトンとします。(当たり前ですけどね・笑)

焙煎する機械によっても、豆の種類や質によっても違うし、同じ機械で同じ種類の豆を焙煎したとしても、季節や、その日の天候によっても微妙に変わるし、『数字やレシピに頼るのはやめよう!』そう言うと、「じゃぁ、どうすれば良いのですか?」そう言われます。(これまた当たり前ですよね・笑Ⅱ)

『豆に聞いてみよう!』そう私は言い、サンプルスプーンで焙煎中の豆を何粒か取り出して、ステンレス製等、丈夫なトレーの上に取り出し、熱いので火傷には注意しつつも、自分の爪で、その生豆の背をグッと押してみて、豆の表面が柔らかくなり、爪の跡が残る程度までになったら温めは大凡OKです。
(温め作業を確認する際の為に私は右手親指の爪を少し伸ばし気味にしています)

そして、その時の温度や時間を、書き記すか、記憶するようにします。これがレシピになるのです。

レシピが有って美味しいものが出来るのではなく、只々必死に美味しいものを作って、それが出来た時、記憶を逆算したものがレシピになるという考え方です。

ちなみに、私の8キロ釜で4キロ焙煎していたとして、コロンビアやキリマンジャロ等、ウォッシュドタイプの豆でしたら、あくまで大凡ですが、時間は5分~7分位、温度は、アナログで160℃~170℃位だったと思います。
3~5キロの釜で、半分くらいの生豆を焙煎したとしますと、多分、時間は同じ位と思いますが、温度は、もう少し低くなるかも知れません。

釜の大きさやタイプによって、時間も温度もまちまちですが、爪でグッと押して表面が柔らかく感じる程度・・・と言う感覚はどれでも一緒です。
さぁ、温まりました!生豆の準備体操が済んだ形です。次は、蒸し焼きに入ります。

その2.→<蒸し焼き>
前回、<温め>の話で、爪でちょっと傷がつけられる程度までが温め作業の目安と書かせて頂きましたが、その後の火加減を<蒸し焼き>しているイメージの火加減で焙煎するのが、実は‟鈴木流”のとても大事な部分になります。

温め作業が済んだ後、余計な水分を飛ばすために、出来れば1分位、ダンパーと呼ばれる排気のレバーを全開にします。

※写真は、私の古い焙煎機ダンパー部分になります。最近の焙煎機ですと、ハンドル式で目盛りが付いているものが多いようですが、やることは同じです。

そして、水分飛ばしの作業が済んだ後、また、ダンパーを最初の温めと同じ「閉め気味」に戻して、次の<蒸し焼き>作業に入ります。

この蒸し焼きのイメージが一番難しいと仰る方が多いのですが、単純に言いますと、温めているだけでもなく、かと言って、外から強い火で焼いてしまっているという感覚でもないイメージです。(余計難しいですね)

簡単に言えば、ここである程度強い火加減にしてしまえば、後は機械任せで焼けるのですが、それですと、外は焦げて、中は生っぽさの残る、いわゆる「酸っぱ苦い」コーヒー豆になりやすいように感じます。

強く焼きたい気持ちをぐっとこらえて、<温め>の時の火加減よりも‟少し強く”、それでいて、外から焼いているよりは‟少し弱い”火加減をイメージして下さい。

私の焙煎機の場合、<温め>時の火加減よりも、1目盛りだけ強く、そして、時間的には<温め>と同じ位の時間を掛けて<蒸し焼き>します。

例えば、トータル20~22分程で焙煎していたとしますと、1分の下げ止まり、その後、6~7分ぐらいの<温め>、また1分の水分飛ばし、その後、6~7分ぐらいの<蒸し焼き>時間を取る形となります。

そうしますと、「焼いている時間が短いじゃないか」と思われるかもしれませんが、そうなんです、焼いているという感覚の時間は、とても短く、<温め>&<蒸し焼き>の時間が殆んどとなるのが『鈴木流の焙煎』という事になります。

温めて、蒸し焼きして、余計な酸っぱさを消した後、さっと焼いて、心地よい甘苦さを表現することが、私の考える、美味しいコーヒー、喜んで頂けるコーヒー、出会えて良かったコーヒー、もう一度出会いたくなるコーヒー、心に残る感動のコーヒー・・・と言う事になります。

さてさて、どうでしょう?蒸し焼きのイメージは、なんとなくでも湧きましたでしょうか?焼いてはいるのですが、焼いていない、何だかちょっと思想家っぽい話で申し訳ありませんが、この感覚が、とても、とても大事です。

・・・とは言いましても、数字が気になる方が多いと思います。

例えば、0.7~0.8kpaで<温め>ていましたら、0.1だけ強くして、0.8~0.9kpaの目盛りで<蒸し焼き>します。
只、これはあくまで私の焙煎機での一つの例でしかありません。

何度でも言いますが、数字は目安や基準にはなりますが、それだけを追いかけても、本物は生まれません。

コーヒー生豆達の声に耳を傾けましょう。彼らがどんなコーヒーになりたいか、どんなコーヒーとして世の中の役に立ちたいか、想いを、願いを、叶えてあげられる‟腕”を身につけようじゃありませんか。

次回は、<本焼き>の部分についてお話しさせて頂きます。

その3.→<本焼き>
前回までに、生豆に対して少し弱めの火で<温め>、そして、一度水分抜きの為にダンパー部分を全開にして1分程待ち、その後、0.1Kpa(1目盛り)程、火加減を強くしまして<蒸し焼き>状態に入る・・・と書かせて頂きました。
その<蒸し焼き>状態が十分に進みますと、<温め>の際に爪が入る程度柔らかくなった生豆が、今度は、次の<本焼き>で膨らむために、ある意味ギュッと縮こまる感じになります。

これは、例えば人間が大きくジャンプするときを想像してみて下さい。多分、しゃがみこんで体を縮めるのではないでしょうか?

コーヒーも同じと私は考えます。

そして、大きく膨らみ、コーヒーとしての味わいを表現するための必要な”旨味”を引き出すために、火力をほんの少し強くして(私は0.05Kpaだけ強めます)そして、今まで中に向けていた熱量を外からに切り替えるべく、空気を十分に送り込むためダンパーと呼ばれている排気を開きます。

この、内から外へ…の考え方がとても大事です。

<温め>ていたり、<蒸し焼き>している間は、内側に熱を送っている感覚ですが、<本焼き>の段階に入って、初めて外側からの熱で豆に”焼き”を入れている感覚です。

昔、焚火をしたりするときに、今なら、キャンプをした時などに、火を良く燃やすためには、空気が必要なので、ふうふう吹いたり、何かで扇いだりした経験はないでしょうか?
焙煎機には、通常、ダンパーと呼ばれる排気装置が付いているのですが、私の考えでは、排気する=釜の中に空気が入る…と考えます。

なので、<本焼き>として外から強い火で焙煎する時には、少しずつダンパーをあけていくのです。

<蒸し焼き>までがうまくいっていれば、分量によっても違いますが、大体、火を強くして大凡1~2分ぐらいで「パチパチ」と、いわゆる1ハゼの音がしてくるはずです。
私はこの音を聞く度に、コーヒー豆達が、『いいよ、美味しいコーヒーが生まれる準備が出来ているよ!』という、彼らの声を聴いているようで、とても嬉しくなります。(鈴木はコーヒー豆達と会話を交わす変わり者です)

その後は、釜の中の状態を出来るだけ同じ状態に保つことを考えて操作します。

1分ごとに火加減を少しずつ弱くして、急に温度が上がり過ぎないようにしますが、その際に、少しずつ空気を送り込む(排気する)為に、ダンパーも少しずつ開いて行きます。

その後、1~2分ほどで、今度はもう一回ハゼる音がしてきます。これがいわゆる2ハゼと言われる音です。
鈴木は、この2ハゼを”幸せの音”として捉えておりまして、『もう少しで僕ら美味しいコーヒーとして生まれるよ!』という、喜びの声を聴いている感覚です。

その後、どこまで行くのかは創り手の好み次第ですし、勿論決まりはありませんので、各自で考えて・・・で良いのですが、鈴木は、もちろん豆によって微妙には違いますが、大凡の豆は、この2ハゼと呼ばれる状態がピークに達したところで火を消して、その後は、余熱で10秒から20秒くらい焼き加減を整えてから、釜から出すようにしています。

<温め>、<蒸し焼き>、<本焼き>、鈴木の感覚で美味しいコーヒーを生み出す為の焙煎は、これである意味完成です。

只、もの創りを極めようとする方達は、もしかすると皆同じ感覚なのかも知れませんが、100%がありそうでない世界、到達できそうでたどり着けない世界、きっと、そんな世界に生きているのかも知れません。

見果てぬ夢を追い続ける覚悟をもって、世の中の為に、もの創りに没頭する事こそが、ある意味答えなのかもしれません。そんなとき、この『焙煎の神髄』コーナーが、一つの道しるべとなってもらえれば幸いです。

長々と、妙な鈴木の話にお付き合い頂いてありがとうございました‼