想い出
1999.04.12
あまりにもたくさん有りすぎる想い出の中から、一つあげるとすれば
やっぱりこれが思い出されます。 キーワードは<9千円>です。
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10代の頃から喫茶業に身を置いていた私は、24~25才になるところでしたでしょうか
ひょんなきっかけで、喫茶店らしきものを始めるようになりました。
それほど立派とは言えないまでも、20代の若者が始めるには
充分な店だったと思います。
今でこそ珍しくはありませんが、当時としてはまだ少なかった3階建て住居の1階部分
大家さんの奥様が、画廊をかねた喫茶室として2~3年営業していたところでした
都合でやめた後は、倉庫になっていたようですが、大家さんがとても良い方で
当時、まだ半分は学生、半分はプータロー(良く言えばフリーター?)の私に
快く貸して下さいました。 広さは約9坪、家賃は格安7万5千円でした。
当時とても厳しい店で修行していた私は、今思えば生意気ですが
腕なら誰にも負けない?自信もあり、喜び勇んで用意を始めました。
ところがここで大問題発生?と言うか、当たり前のことなのですが資金が足りません!
お店を始めるからには、いくら最低限でも揃えなければいけないものが沢山あります。
昼は喫茶店、夜はパブで働いていた私ですが、当時の貯金はせいぜい20万円程度
これで店を始めようと言うのが間違いなのですが、それに気がつかないのが「若さ?」
どうにかなると思っていたようです。
家を飛び出していた手前、親に泣きつくわけにも行かず、とにかく必要最低限で開店まで
こぎ着けようと思い、何とか「その日」、開店当日を迎えることが出来ました。
その日の朝、ポケットの中には9千円と小銭が少々。一番最初のお客様が
1万円だったらどうしよう・・・。訳のわからない心配を真剣にしたのを覚えています
それより問題は、その日の売り上げでしょう。もし売り上げがなければ、
次の日の買い物が出来ず、1日で閉店になってしまいます。何とも情けない話ですが
これが、私のスタートでした。 お陰様で、次の日開けられる程度の売り上げもあり
今に至っています。 キーワードは<9千円>もうあのドキドキは経験したくないけれど
あの日のわずかな売り上げに、心から感謝した気持ちだけは忘れないように・・・
今でも、毎朝思い出すようにしています。