焙煎職人:鈴木正美のShort Story⁈

2019.12.02

こんにちは!鈴木でございます。いつも使いにくい当店をご贔屓賜りまして、本当にありがとうございます。また、最近は特に初めてご利用頂くお客様も多く、感謝の気持ちでいっぱいでおります。長年のお客様には、ある意味有名な(聞き飽きた?・苦笑)話ですが、鈴木と言う人間が、なぜそんなにもコーヒーに思いを込めて過ごしているのかをご理解いただくために、『焙煎職人:鈴木正美のShort Story』なるものを書いてみました。万が一お時間ありましたら、御笑読頂ければ幸いでございます。
※今回の写真は、『出没!アド街ック天国』の撮影風景です。とても真面目で一生懸命な撮影部隊の方達でした。素敵な出会いに感謝・ありがとうございました!

=焙煎職人:鈴木正美の「Short Story」=
☆出会い
これはっ!?…と呼べるコーヒーとの出会いは、私がまだ24~25才の頃、当時、ひょんなことから元手もなく始めた小さな喫茶店でしたが、開店して間もなく胃を悪くしてしまい、お医者様から「酒・たばこ・コーヒーはダメだよ」と言われ、『喫茶店を開店したばかりなのにコーヒーも飲めないのか?』と悩んでいた頃でした。
当時、自家焙煎の喫茶店が配っていたクリスマスのプレゼント用コーヒー、僅か10g位の物でしたが、その店でアルバイトしていた現在の家内からそのコーヒーを貰い飲んでみたところ、『今まで飲んでいたコーヒーとは明らかに違う・・・』苦味、酸味と言うより、ほのかな甘みさえ奥に感じられて、胃に入った時にすっと消えるような感覚・・・、『これは一体何なんだ!?』後頭部を強く殴られたような衝撃を受けた私は、“自家焙煎コーヒー”という物を初めて知り、その魅力に引き込まれて行きました。

☆迷い・・・そして気付き
何とか自分自身で美味しいコーヒーを創れるようになりたい、そして、ゆくゆくはそのコーヒー豆を販売するお店を経営して生きて行きたい・・・。そんな思いを持ち、当時、食事メニュー中心だった店を、勉強を始めた自家焙煎コーヒー中心に切り替えつつ、コーヒー豆の販売も始めましたが、残念ながらコーヒー豆は全然売れませんでした。
自分自身では美味しいコーヒーだと自信を持っていたのですが、まるっきり世間には受け入れられません。そのうちに、店の経営は傾き、借金は増え、やがて月末の払いも出来ないようになり、更には、もうどこも借金をさせてくれるところもなくなって、そんな追い詰められた状態が数年続きましたでしょうか、ある朝、気が付けば、全財産かき集めても2千円と小銭が少々だけしかありません。店のお釣り銭さえままならない状態となっていました。月の半ば、その月の月末にはまた多くの払いをしなければなりません。
『もう無理だ』自暴自棄になっていた私は、とっさにその全財産ともいえる2千円を握り締め、1キロほど離れた場所にあったホームセンターに首を括る縄を買いに店を飛び出しました。恥ずかしい事に、生きる気力をなくしてしまっていたのです。
暑い夏の事でした。『こんな暑い夏にコーヒー豆なんか売れるわけはないじゃないか。俺はもう何から何までやり尽くしたんだ、だから死んでも良いんじゃないか・・・』そんな自問自答をしながら歩いていた時に、ふっと、思い浮かんだことが有りました。何から何までやり尽くしたようで、たった一つやっていなかったことに気が付きました。それは、人様が喜ぶコーヒー創り、自分以外の人たちの為のコーヒー創りです。
今まで自分がコーヒー豆を焙煎し、販売していたのは、全て自分の為、自分さえ良ければ・・・と言う思いでやって来ていたのです。『まだやり尽くしたわけではなかった!』そう気が付いた時、もう少しだけ頑張ってみようと、死ぬことを思いとどまりました。

☆感動
死ぬことを思いとどまった私は、その握り締めた2千円で、はがきを買って帰りました。当時、コーヒー豆を買って頂いている方達にはお名前やご住所をお聞きしておりましたので、その方達に、これが最後になるかもしれないからと思い、『真夏の夢フェアー』と銘打ったコーヒー豆販売の小さなフェアーを企画してみたのです。
勿論大したことが出来るわけではありません。生豆を購入することもままならず、焙煎出来るコーヒーも限られています。只、初めて、自分自身の利益の為ではなく、飲んで頂ける方々に喜んで頂く事だけを考えて、自分自身の得意だったオリジナルブレンド(ときめき、綺麗、希望の珈琲、等々…)を中心にお知らせを書きました。
そうしましたら、暑い8月の半ば過ぎであるにもかかわらず、今までにない、多くのお客様にコーヒー豆をご購入頂けるようになりまして、自分自身でも信じられない思いに包まれたことを記憶しております。
「ここのコーヒー飲んだら、もう他のところじゃダメなのよ」とか、「鈴木さんのところ安すぎるから、もっとちゃんと儲けてお店続けてよね」等々、ありがたすぎるお言葉までかけて頂いて、その夜は、恥ずかしながら、大人になって初めて嬉しくて号泣したことも忘れられません。
その後は、自分でもビックリするぐらい、多くのお客様達に支えられて、現在では30年以上店を続けさせて頂いておりますし、全国各地のお客様、各界著名なお客様達にも御支持を頂けるようになりました。

・・・コーヒーは飲めば消えてしまう、その時だけの単なる飲み物でしかありません。只、その味わいは消えても、余韻が心に残り、小さな感動を生み出せるものでもあると確信しております。
そして、その小さな感動は、明日への生きる希望に繋がって頂けるはずです。
『出会って良かった…と思って頂けるコーヒー創り、もう一度出会いたい・・・と思って頂けるコーヒー創り』
鈴木のコーヒーは、その思いだけで成り立っております。若干使いにくい店で恐縮ですが、御縁を感じて頂けましたら、今後とも、どうぞよろしくお願い致します。

令和元年12月吉日

使いにくい店のご贔屓に心より感謝を込めて… 焙煎職人 鈴木正美