HANKO(はんこ)

=日記・05年2月9日「はんこを押すたび涙ぐむ、わけ有りの鈴木?!」より=
sutanp2 面白味の無い絵なのですが、これは店用の「ゴム印(店判)」です。 先日、荷物が届いた時に押していて思いだしたのですが、このゴム印、実は、ちょっとした思い入れ(?)のはんこなんです。
普通、店用のゴム印には、店名・住所・電話番号等が書かれているのですが、当店の物には、何と住所が有りません。(店名&フリーダイヤルだけとなっています)これって、ちょっと変ですよねぇ。
実は、無いのではなく、元々は当たり前のごとく有ったのですが、何とそれを削り取っているのです。
今から7年近く前、私たちは、柏市で営業していた店を引き払い、この我孫子へと移転してきました。有る物だけを使い、無い物は手作りして、何とかそれらしくして店を開こうとしたとき、店のはんこが前の店の物しか無くて、住所が違っていることに気が付きました。
多分2~3千円程で作れる物だと思うのですが、夜逃げ?ではないけれど、それに近い、スッカラカンの状態で“最後の賭け”としてこの地での決戦を選んだ私たちには、その数千円がとても大きな金額に感じました。「どうしよう?」困って尋ねた私に、しばらく考えていた家内が急に、カッターでゴム印の住所を削り始めました。「なっ、何をするんだよ」慌てる私に、「私たちには、住所なんて別にいらないのよ」そう言いながら住所の部分を削り取って、判を押してみてニコッと笑いました。「・・・そう、考えてみたら、そうかも知れないね」私も、何かが吹っ切れて、笑った記憶があります。
その後は、只々必死で、振り返ることすらあまりなかったのですが、気が付けば、ありがたいことに多くのお客様にご利用いただけるようになり、ご注文が多すぎて作るのに時間が掛かり、販売時間を短くしなければならない程です。
テレビ、ラジオ、雑誌、新聞等を始め、多くの分野でご紹介いただきコーヒー豆店として「日本一のアナログ個人店」とまで、言って頂ける事もあるほどになりました。全国のコーヒー屋さん達が、私の話を聞きにわざわざ訪れたり、味作りのご相談もしょっちゅうです。まさかそんな立場の店が、ちょっと前まで、ゴム印も買えなかったなんて誰が思うでしょうか?・・・勿論、今更そんな恥ずかしい話をする必要も無いのかも知れませんが、あえて、機会を見つけたら出来るだけ、話していこうと思っています。「くどいプロフィールページ」にもあるように、今から10年程前には、追いつめられて“死”を真剣に考えましたし、7年程前には、ゴム印も買えませんでした。
勿論いまだに私たちは決して裕福ではありませんし、味創りにこだわりすぎるため、販売に対してはあまり積極的ではないのですが、「ここの珈琲でないとダメ!」と言われる事もとても多く、皆様に愛される店になりました。追いつめられても、あきらめずに頑張り続ければ良いこともあるのです。「住所の削られたゴム印」このはんを押す度に、涙が溢れるほど感謝の気持ちで一杯になります。本当に、皆様ありがとうございます!(はんこ押して泣いてたら凄く変ですよね・笑)
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